くらげーむ

やったゲームの話をします

【ウミノオト】海の記憶が甦る

https://play.google.com/store/apps/details?id=com.yukilabo.uminootoplay.google.com

ジャンル ADV
プレイ環境 Android
知ったきっかけ RTで回ってきたプレスリリース
DLの流れ プレスリリースの内容見て好きなやつと直感、即DL。

三人チームで開発しているらしい、個人製作の無料ADVアプリ。
初リリース作品ということもあって色々な面でハイクオリティとは言い難いものの、やりたいこと、見せたいこと、こだわりが強く伝わってくる上にその点が自分と相性良かったので良いゲームだったなあという感想に落ち着きました。

「海を感じさせる」力


これ日本の海だわ!
と、一目で思いました。子どもの頃に海水浴へ連れて行ってもらったりした、あの海。
グラフィックは見ての通りアマチュアさんの作品だな、と思う粗削りなものなのですが、自分の思い出に残っている海の光景を引っ張りだしてくる力を持っています。砂浜と波の色合い、白く砕ける泡の光り具合、ぼやっと霞んで見える遠景。知ってる……知ってるなあ、この海。磯の香りがする。


キラキラ反射する水面、飛んでいくウミネコテトラポットの彼方に水平線。
実はウミネコ、飛んでいかないんですが……そこに浮いているだけです。
スクショ撮る分にはタイミング気にしなくていいので都合が良い。

そして音がとても良いです。環境音は100点満点。
なにせタイトルが「ウミノオト」ですし、これが目玉っぽい。
寄せては返す波の音にウミネコの鳴き声、時折聞こえる船の汽笛、あとなにより貝を拾った時のシャカッという音が本当に気持ちいい。
貝の音、本物使って自力で収録したそうです。

『ウミノオト』のタイトル負けにならないように、音にこだわってつくりました。 特に唯一のBGMでもある波音は、4か月間100種以上聴き比べて選びました。 また、貝殻を拾う時の音は自分たちで本物の貝殻を使って録音したものを使いました。

海なし県民ディベロッパーたちの海への憧れが詰まった『ウミノオト』インタビュー│ゲームクリエイターの楽屋でまったり by Game Creators Guild

この音の力もあって、ゲームを起動している画面の中には確かに海がありました。
海を作ろう見せようという確固たる意志がグラフィックの拙さを補っている。

グラフィックは基本的に美麗であればある方が良いのでしょうけれども、良ければそれだけでいいというものでもないな、というのをこのゲームで再確認した思いです。ただ綺麗なグラフィックがそれだけあったって、10分も見続ければ多分飽きる。

ここで思い出したのが、その昔PS2同梱版でプレイした初代ラチェット&クランク
これはPS4リメイク版との公式比較動画。
youtu.be
自分でもびっくりするほど、初代の映像を今見てもまだわくわくできる。
PS4版は確かにやっぱりグラフィックがすごく綺麗になっているのですが、隣に並べられてもPS2のグラ無理だわ~とはならない。思い出補正も多少あるとはいえ、でもPS2時代のグラフィックですよ?
がちゃがちゃメカメカしたロボットや建物と草木のバランスとか、洞窟を抜けて眼前に開けた風景が広がるタイミングとか。あんなに解像度の低いぼやけた映像であってもSFファンタジーな世界に立ってる実感がものすごくある。
PS4リメイク版も映像を見る限り、初代のステージにあった魅力の芯を残したまま最新の映像にアップグレードさせた感じがします。買ってなかったんですけど、やりたくなってきたなこれ……。

ゲームはグラフィックだけで構成されるものではない。
全ての要素を使って、プレイヤーにその世界の存在を体感させたら勝ちなんだなと思います。
ウミノオトはその点にかなり力が入っていて、私は満足しました。

あと一歩……と思うところは多いけど

コンセプトの揺るぎなさ、それを伝えようとする真剣さには心が動きましたが、ゲーム全体のクオリティとしてはさすがに発展途上かな、と思います。個人製作のフリーゲームなので大目に見られますが、有料にするには厳しいかもしれない。個人的には気に入りましたし300円くらいまでなら出せるなと思いますが。

ゲームのルールとして、貝殻を集めるとポイントが貯まっていき、一定ポイントで海の音を発するオブジェクトと交換できます。(流木とか、音関係ないオブジェクトも結構ありますが)徐々に景色を増やしていくと、「女の子」とか「女の人」とか人物の追加も出てきます。
この人たちはおそらく主人公の家族……なのでしょうが、はっきりとは分かりません。雰囲気で悟らせるのはこの手のADVあるあるなのでそれは構わないのですが、交換するなりポンと現れるだけでストーリーを匂わすフレーバーテキストなどもなく、1万ポイントとか掻き集めた報酬にしてはちょっと物足りないと感じます。
「女の子」については主人公そっくりのちょっと小さい版(妹さん?)なのですが、この子だけは主人公を追って走ってきます。
まって……あそぼう……?とか囁きながら……ごめん、ちょっと怖い。
でも追従速度がとても遅いので、貝殻欲しさに全力ダッシュしている間はずっと置き去りになっていました。

一人海岸線を歩くスクショを……

撮ろうとした数秒後にフレームインしてきちゃう妹さん(仮)
ガンダッシュで振り切っておいて撮りましたけど
ゆったりと海を歩いて癒されるにはちょっと邪魔になってしまって、申し訳ないけど交換しない方がよかったなと思ってしまいました。
交換しておかないとおそらくエンディングは見られませんが……。
エンディング見た後なら表示・非表示切り替えれる機能なんかがあったら良かったなと思います。

※カメラボタンがついていてUIなしのスクショが撮れます。でも端末のアルバムには保存してくれないようで、シェア機能を使う必要があります。スクショは常に主人公が真ん中に来る状態でしか撮れないのであんまり凝れません。まあ多分これはオマケ機能であってそういうゲームではないので致し方なしとは思います。

あとこれに関してははっきり苦言かつネタバレになってしまうのですが、一番最後の3万ポイントかかるオブジェクトを交換しても何の意味もないというのは大きめのマイナスでした。足場の途絶えていた灯台に向かって、意味深な光の橋がかかるんです。正直期待しました、なんかあるのかなって。主人公の記憶の断片が拾えるとかそういう……そういう雰囲気に思えたんです。ところがどっこい、灯台周辺でしか取れない種類の貝殻があるということすらもなさそう。いや一個図鑑埋まってないので取れてないだけかもしれませんが……レア出現にしてたらやっぱり意味がない。頑張ってようやく最後のオブジェクト開放したんだから何かご褒美ないとダメですよ!ゲームなんだから!!

※実際のところは無意味というより、エンディングを見る条件にひっかけたミスリードのつもりなのではないかと推測しています。ここが目的地かな? と思わせそうなギミックがあります。橋開放するより先に気づいちゃってたけど……。行った先に二つ目のヒントなり、ストーリー補強するアイテムなり、何かしらは用意してほしかったなと思うところです。がっかり感がすごい~~~

まとめ

ゲームとして大満足と言うと嘘にはなるという感想ですが、しっかりと良いところを持っている作品だと思いました。無料ですし、ちょっと気晴らしに触ってみようかとDLする分には楽しめると思います。
作品で何を見せたいのか、芯の部分にこだわりがあってちゃんと形にしてくる開発者は信用できます。雰囲気はとても好みで気が合うなーと思うので、次回作、将来に期待しています。

ところで波音アプリとしてBGM用に使いたいところだったのですが、スマホほかほかホッカイロになってしまうので厳しいんですよねー……。
端末2年前くらいの機種だから? 最近のゲームアプリほんと発熱がすごい。


「さがしにいく」とか、そういう細かいところに気を配ってるあたりも気が合う。
いつか最高神ゲーって私が叫べるゲーム出してほしい。待ってます。