くらげーむ

やったゲームの話をします

【ファミレスを享受せよ】感想&攻略メモ・深夜のファミレスに漂う永い夜の空気

oissisui.itch.io

ジャンル ADV
プレイ環境 ブラウザ
知ったきっかけ RTで回ってきた
購入の流れ なんとフリーゲームである

仕事上がりでさあゲームするかと思ったところにとんでもない作品が流れてきて2時間消し飛びました。なんだこれは。なんだこれは。深夜ふとファミレスを訪れた……と思ったら何だかおかしなファミレスのような空間に到達してしまったところから始まるポイント&クリックアドベンチャー。ちょっと気だるげで、でも暗すぎることはなく、ドリンクバーだけで永遠に続きそうなファミレスの夜を過ごします。しっかしりしたシナリオテキスト、味のあるグラフィック、落ち着くような落ち着かないような何ともいえないBGMの数々、全てにやられました。プレイ時間30分~って書いてあるけど初見30分では絶対エンディング見れないと思います。時間感覚おかしいよ! ムーンパレス基準かな?

なんとドリンクバーもあります。

いいですね。

不穏さはあるけど恐怖・びっくり演出はない(よっぽどダメな人だとほんのり怖く感じる瞬間はあるかも、程度)のがとてもありがたかったです。こういう雰囲気は好きだけどホラーは得意ではないので……。

以下とりとめのない感想文。ネタバレはないと思います。攻略メモもぼかし気味に書いてます。

魅惑のファミレス・ムーンパレス


人気ない道の途中に在る夜中のファミレス。闇の中に煌々と灯りがともっているあの感じ。画面が全て真っ暗闇と月の光と青い影の色だけで塗られているのがあまりにも良い。線がうねって歪んでいるのが、眠くないけど頭は働いていない深夜の視界で見る世界のようでものすごく没入感がありました。


この感じ……。

外には月と闇しかなく、ドアは開かず、老いも飢えもせず死ぬこともない、死のうとしても死ねない。そういう異様な状況に放り込まれてしまうにもかかわらず、空間自体は常にのんびりと気怠い深夜のファミレスそのものの空気が充満しています。店で出会う先客たちは既に数千年数万年過ごしているらしいのですが、話してみるとどこかさっぱりした印象を受けます。この状況に憂いているとか退屈しているとかいう話も一応出てくるものの、あんまり重たい話し方ではなくさらっとしている。ドリンクバーのメニューだったらどれが好き、みたいな雑談を振った時とテンションが変わりません。ボイスや表情差分といったものがないのがかえって良い効果を生んでいる気がします。

だからとにかく何だか居心地が良い。快適ってほどではないし、閉塞感もあるけど、悪くない。ドリンクもみんな美味しそうだし。

最後の最後までこの淡々とした雰囲気が続くのがとても良かったです。密室で永遠の時を体感させられる設定だと悲痛悲惨な残酷描写になりがちなイメージを持っていたので新鮮でした。永遠のファミレスを享受せよ。ほどほどに暇を潰して楽しもう、どうにも仕方がないし。

そわそわして不穏な気分と、特に何も起こらない退屈な平和とが同時にやってくる感じ……うーんいけないムーンパレスが気に入りすぎてだらだら延々と魅力を語ってしまう……語りたい。でもどんだけ喋っても伝わらない気がするのでもうみんなみんなプレイしてほしい。ドリンクバーは永遠に飲み放題だよ。

マップ画面に出るチープな貼り紙みたいなフレーズ大好き

店内BGMもまとめて公開してくださっていて大変ありがたいです。
www.youtube.com

シンプルな要素が細かく丁寧に扱われる気持ち良さ

ゲームとしてはごくシンプルで、どこまでもポイントをクリックしては選択肢を増やし、キャラクターと会話していくだけ。けれども、同じ話題からそれぞれの視点、価値観に基づく言葉が引き出され、キャラクターの背景や関係性が見えてくることに引き込まれます。マップを経由してみんなの席を何度も訪問していると、本当に店内をぐるぐると何周も巡っている気分になってくる不思議。

他の人と会話した内容を踏まえてテキストが変わっていく様がとても丁寧です。上手く言えないのですが、無機質な「選択肢とそのレスポンス」ではなくみんなと雑談をしているという感覚がちゃんとあります。操作自体は本当にただクリックするだけなんですが……おそらくテキストが良いのだと思います。うう、上手く言語化できない……。
そのうち分かったら追記することにします。まだ意識がドリンクバーに沈んでるわ。

あるいは各テーブルを訪ねた時に「向かいの席に座っている」感じの絵になるのがいいのかもしれません。

声に出して読みたくなるガラスパンさんの名台詞。

魅力的な名前のドリンクは全部しっかり飲めるし、感想が聞ける。全員に好みを聞いて回ることもできる。そういう自分の意思で遊んでるだけのように思われる些細なところに本筋の伏線がちゃっかり入っていたことに後で気づいてしびれる。一見不条理でナンセンスな絵の集まりが、最後のページを捲ったところで意味のある物語に変わる。情報の出てくる量とタイミングが絶妙で、もうずっと気持ちいい。気持ちいいばっかり言ってしまう。これは癒されるゲームです……。

モヤモヤは残さず、でも神秘は残る

そういった部分だけではなく、エンディングまでの全体を通しても出てくる情報量がちょうどいい塩梅だったと思います。客たちはどうして謎のムーンパレスにやってきて閉じ込められてしまったのか。それぞれの素性。元居たところに帰ることはできるのか。話を進めていく上で一番気になる部分はきちんと説明され、モヤモヤが残りませんでした。ミルクだけ品切れになっちゃう理由もちゃんと分かる。なるほど。

一方で、ムーンパレスとは何なのか、それを管理しているのは何者なのか――といった背景については、事務的な説明や本人たちにしか理解しきれない自然な会話の回想でしか語られません。テキスト量自体は結構あるので、しっかり読み込んで考察すればそこそこ形のある物語を組み立てられるとは思います。でもきっと隅々まで明確には分からないし説明できないままになる余白がたくさんあるはず。

目の前に出された謎がするりと解けて明らかになる瞬間は快い。でも、謎は謎のままである方が魅力的なこともあります。分からない間は無限の可能性に期待が膨らみあれこれと想像していたものが、分かってしまえば「何だそんなものか」になってしまう。古株の先客ガラスパンさんがまさにその話をしています。大評判のミステリー小説も読んで分かってしまえばそんなものかとガッカリする、と。謎が全て解明されてしまうお話は、解明の瞬間がピークになり、余韻が残りにくい。

本作は主人公にとって必要な情報は全部出しつつ、広大なバックグラウンドについては「詳しくは分かんないけどそういうものか」でゆるっと置いたままにしてくれます。想像する余地、神秘的な部分を残しながら本筋自体はスッキリ終わってくれる満足感。本当に良い物読んだなという感じです。がっつり謎を残して手がかりだけ置いていくタイプの語り方も嫌いではないのですが消化不良を起こしがちなのでこういうの求めてた! という気分。

この読後感の良さには、主人公のキャラクター造形も一枚噛んでる気がします。ヘンテコな状況に納得はしてないけどほどほどに適応し、何事も「まあ……やってみるか」くらいのテンションで状況をじわじわ変えていく主人公。本当にイイキャラしてます。全てが片付いてムーンパレスから退店した後、思うのは何より「みんな元気かなあ」だということ。そうだよね、みんな元気だといいよね。

攻略メモ

最後に、ちょっと詰まりやすいところなどもあったので攻略メモを置いておきます。
ネタバレになりそうなところは白字にしました。選択反転でどうぞ。(古の手法)

  • 主人公のテーブルに置いてあるノートでセーブができます。
  • 前半はとにかく話を聞いて聞いて聞きまくる。全ての雑談を享受すべし。
  • 振れる話題、取れる行動は全員に対して行うのがコツ。
  • たまには主人公の席にも戻ってみましょう。
  • 間違い探しについて
    • ツェネズに「暇じゃない?」と尋ねるとドアの下からススス……と差し出してくれます。以降主人公の机の本をクリックで遊べるようになります。
    • 難易度はサイゼ並かページによってはもっと意地悪です。細かい飛沫付近の間違いを見逃しやすいです。線の傾き方が違うみたいな間違いもあります。
    • 9ページ目の魚は間違いではありません。間違い箇所は右上の方にちゃんとあります。私はまんまと引っかかりました。
    • クリアしなくてもエンディングには影響ありません。新たな話題の入手もありません。ただしここでしか読めないテキストはあります。Steamの場合実績も取れます。
  • 行動に対する警告に怯える必要はありません。(怖い演出はないです)
  • ボタンの操作方法が分からないならアイテムを見逃しています。
    アイテムはそのボタンから目線を床に……。
  • 開かない箱は気合でいじくる。(そこそこの回数トライする必要があります)
  • ドリンクは持ち運んで任意の場所で飲むことができます。
  • エンディングは2種類あります。
    ※会話差分だけではない異なる結末があります。
    ※両方見るのに最初からやり直す必要はありません。*1
    • END1:キャラクターAにアイテムAを渡すパターン。
      • あるキャラにアイテムBを渡した回数によって台詞が変わる箇所があります。
        (台詞が変わるキャラは2人居ます
    • END2:キャラクターBにアイテムBを渡した後指示に従うパターン。
      • Bがアイテムを受け取ってくれない時は見逃しているイベントがあります。
        相手のことをよく知る必要があります。ドリンクの力を使いましょう。
    • ②がTrueEndっぽいですが①もBadEndではないし怖いことは起こりません。

間違い探しについては攻略をSteamに置いてきたので、よかったら参考にしてください。
steamcommunity.com

【追記】見落としやすいテキスト

他の人の感想が聞きたくて実況動画や感想を漁りまくっているのですが、特定のテキストを見落とす方が結構多くてうずうずしてきたので、見られるタイミングが限られるテキストについて書いておきます。もちろん遊び方は自由なんですが、隅々まで堪能したいタイプの方にはぜひ読んでほしいです。ネタバレになるのでこれも白字で伏せます。2周目やる際などにはよかったら参考にしてください。

①話題「新しい部屋を見つけた
キッチン初見時にしれっと取得しています。そのまますぐに冷蔵庫を開けてしまうと話題が消滅します。いちいちみんなに報告して回る主人公もみんなの反応も面白いので見てほしい。

②話題「月は二つある
キッチンで取得できます。前半で「月について」を取っておかないと取れなかった気がします。

③話題「計器が示すもの
隅に移動してきたツェネズから取得できます。

※②③は箱を取得してしまうと消滅するようなので、セロニカとガラスパンの反応を見逃している方がかなりいます。自席周辺からテーブルを巡るタイプの人が引っかかりがちです。話題を入手した時点ですぐに聞きに行くと良いです。

④特殊メッセージ
作者さんの遊び心的な何か。箱のパスワードをあらかじめ控えておいて総当たりせずに開けた場合、専用のテキストが出ます。数十万年分のタイム短縮。こういう細かい仕込み大変ありがたい。

⑤断られる
細かい仕込み大変ありがたいその2。王さまにクラインのことを先に聞いているとこちらのお願いを断られるようになります。軽い気持ちで試してこのテキスト出した時の感想は言葉になりませんでした。

【追記2】Steam実績の取り方

攻略を探してこの記事を見てくれている方が結構いるみたいなのでついでにSteam実績の取り方ヒントも書いておこうかなと思います。イラストギャラリー(設定資料集)が本当に充実しているのでブラウザ版クリア済の人にも是非プレイしてほしいです。

①いらっしゃいませ:ゲーム初回起動で取れます。
どれが好き?:全部飲みます。私は月の涙が好きです。
可能:普通にプレイしていれば取れます。
またのお越しを:END1到達で解放。
92番に捧ぐ:間違い探しを最後までクリアする。
再会:END2到達で解放。イラストギャラリーも解放。
約束:END1の差分を見る(クラインの望みを叶える)と解放できます。
偶然?:前項④の特殊メッセージを見ると解放できます。
おしゃべり:全話題回収。めちゃくちゃ苦労しました。

⑨については累積ではなく1回のプレイで全部入手する必要がありそうです。また、一部の話題は入手しただけではなく使用する必要があるかもしれません。実績をとるためだけに周回した際必須のみ使用していたところ全話題回収したにも関わらずアンロックできませんでした。

入手した話題は特定の別の話題を入手した際に消滅することが割とあり、使用できる相手が決まっている話題もあるため、その時点で取れる話題を全部入手しているかどうかゲーム上で確認するのは難しいです。そのため実績を狙う場合は新しく入手した話題をその場で即全員に振りに行くのが良いと思います。貯めておくとどこまで聞いたか分からなくなって漏れる可能性が高いです。

【取得漏れしやすい話題】

  • 各キャラについての話題から派生する掘り下げ話題5種
    • ガラスパン宛だけ2種あります。
  • 店内の物をクリックで取れる話題8種
    • 全て前半 (話題がごっそり消える前)で取得できます。
  • 〇〇な雑談シリーズ8種
    • ブラウザ版からの追加は4種でした。
  • END1差分条件中の話題3種
    • 実績狙いの場合おそらく通しで取得しないといけないので忘れずに実施。
    • 前項⑤の通り取れなくなる場合があるため注意。

まとめ

エンディング2種類とも見てプレイ時間2~3時間といったところでしたが、体感時間は数百万年です。数百万年だけど一瞬です。いや本当に。やれば分かります、多分。何か色々あったけど、数百万年の一夜をファミレスで共に過ごした人たちとの想い出だけがふわっと残る。そんな作品でした。

はー……月の涙飲みたいなあ。

余談:
同作者さんがサイトで公開している短編RPGも大変面白かったのでお勧めです。
難易度は高い。死に覚えゲー+運絡みますが短くてテンポ良いので何度もリトライして頑張ろう。ついつい左から順に選択しちゃうけど難易度は易しい方から黄→青→赤ルートなんじゃないかと思います。
http://oississui.com/game/Lake/

語り足りなくて感想・考察記事を追加しました。(ネタバレ注意
kamkrgame.hatenablog.com
kamkrgame.hatenablog.com

*1:台詞差分についてはセーブしたタイミングによって見られなくなることもあります。