くらげーむ

やったゲームの話をします

【Sable】砂漠の旅で自分の芯にある価値観を知る

store.steampowered.com

ジャンル ADV
プレイ環境 PS5
知ったきっかけ 信頼できる相互フォロワーがドハマリしていた
購入の流れ 去年サマーセールで爆買いしたうちの一本

広大だけどあまり荒涼としてはいないどこか温かみのある砂漠の大地を相棒のシムーンさん(エアバイク)と共に駆けるオープンワールド探索アドベンチャー。去年プレイして非常によかった一本です。あまりにも浸りすぎたためにかえって全く言葉にならず下書きの海の中に埋もれたまま丸一年経っていましたが、げむすきゲーム紹介アドベントカレンダーを今年もやると聞いて一念発起掘り起こすことにしました。ザリもやる!!

プラットフォームはSteamPS5Xboxとあるようです。ザリガニのみなさん*1もそうでないみなさんも、砂漠の惑星ミッデンへグライドの旅にでかけませんか……。

ちなみにプレイ時間はトロコンして30時間でした。大作ゲームの合間に気楽に触れるボリュームではないかと思います。

肝を要約した結果タイトルが何かゲームの記事じゃなさそうな雰囲気になっていますが普通の布教&感想文です。よろしくお願いします。

雄大な砂漠の旅

今回はおすすめ布教記事でもあるので、まずはネタバレしない程度にゲーム内容を紹介していきます。

主人公はアイベスク族という遊牧民一族で育った少女セーブル。タイトルはそのまま彼女の名前です。舞台となるこの世界はミッデンと呼ばれ、どこまでも一面砂漠に覆われています。一見殺風景なようですが、いかにも砂漠の都市らしい建物が並ぶ町があったり、ところどころ宇宙船のようなものの残骸があったり、ユニークな植物が群生する森があったりと神秘的な景色がたくさん見られます。オープンワールドなのでこの景色の中を自由に走り回れるのが大きな魅力の一つ。高いところから滑空できる不思議な力を一時的に授かるので、スタミナの続く限りどこまでも高く山や壁を登っていくこともできます。この壁登りを駆使してちょっとしたパズル要素を解きながら各地を探検していくことになります。

アイベスクの集落にて。このポッド的なやつはこう見えてポスト。

ミッデンでは、人は皆マスク(仮面)を被って一生を過ごします。行商人なら商人のマスクといった職業を示すマスク、またはアイベスク族のマスクといったように所属を示すマスクなど、何かしらその人の「生き方」を表すマスクを被ります。*2そして一度これと決めれば二度と他のマスクに取り換えることはありません。ミッデン中を旅して周り、様々な人と関わりながらマスクを集め、その中から自分が生涯被り続けるマスクを選択することがミッデンにおける成人の通過儀礼です。

プレイヤーはこの成人の儀である「グライドの旅」に出る主人公セーブルとなって、ミッデンを旅し、自らの意思でマスクを選ぶ、というのがゲーム内容の全てです。

まあこの旅が楽しくて楽しくて。

こういう人生送りたかった……みたいな気持ちになる情景
これは宿。雰囲気たっぷりの集落……

ゲームのメイン目標としては何かしらマスクを手に入れてこれにします! と決めればそれでゴールなので、一つ手に入れたら満足して即旅を終えるもよし、隅から隅から旅して周って端から選ぶ気のないマスクまでフルコンプするもよし。エアバイクを好みにいじり倒すもよし、砂漠魚釣りするもよし(この手のゲームは釣りがあるかないかでやるやらない決める人がいるので重要情報)お小遣い稼ぎまくって服を買いオシャレを極めるもよし、ただ宿でダラダラして写真とりまくるもよし。何やっても自由です。期限はない。敵なんてもちろん居ない。

集めたパーツとカラーセットを組み合わせてカスタマイズ
釣ったお魚の目が××になってて可愛い

ちなみに、各地にはほんのりとこの世界の成り立ちを匂わせるような情報も散らばっているようですが、そんなに多くは語られません。いずれもまだ研究途上であるようです。そこに興味を抱いたあなたのセーブルは、生涯をかけて世界の謎に挑む道を生きていくのかもしれません。

全てはプレイヤー次第なので人は極力無視して景色を堪能するというのも一つのスタイルではありますが、全般的にテキストがとても味わい深いので、ミッデンの人々には色々話しかけてみてほしいなと思います。

要所で響くジャディおばあちゃんの言葉

主人公のセーブルも(心の声含め)結構よく喋ります。しかしそれでセーブルとプレイヤーが切り離される感覚があるかというとそうでもありません。これはセーブルの人生の物語ですが、旅の中で何を感じ、最後にどのマスクを選ぼうと思うのか、そこには間違いなくプレイヤー自身の体験と価値観が映し出されます。

ゲーム内容のプレゼンは以上です。

次の段から「マスクを選択する」という体験についてもう少し踏み込んだ自分の感想を書いていきます。
詳述はしませんがクエスト中の会話内容に触れるところが出てきてややネタバレになるので、既に「このゲーム買いだ!」になっている方はここで読むのをやめてポチっといってしまいましょう。いってらっしゃい!(プレイ時の注意だけは読んでもらうといいかも)

マスク選びは一生の選択でも最大の選択でもない

マスクを手に入れるためには、ミッデンに生きる人々と関わり、彼らから「バッジ」を受け取る必要があります。主にお願いを聞いてあげた報酬として受け取る形が多いです。(商人のバッジは商人から買わないといけなかったりします。さすが商人)バッジを3つ集めると、それに対応したマスクを作ってもらうことができます。*3

機械をいじったり作ったりすることに喜びを見出す機械工。
砂漠を行く人に一時の居場所を提供する宿の主人。
知恵を巡らし利益を得ることを生きがいとする商売人。

みんな自分の生き方を気に入っていて、色々な人と話をすればするほどどの道も非常に魅力的に思えてきます。この中から一つしか選べないの? しかも一生変えられないの?
悩む……。

そうして全然決められそうにないままマスクを集めていたところ、元衛兵のエリザベットという人に出会いました。大都市エックリアで衛兵を務めていましたが、今はその職を退いてグライドの旅をやり直しているとのこと。通過儀礼をやり直すことはできないので、そういうつもりで旅をしているという意味。

セーブルと意気投合したエリザベットさんは、旅の行く先でセーブルと再会するたびに沢山お話を聞かせてくれます。その中でまさに悩んでいたことの真正面を貫かれたのが以下の一言。

「あまり考えすぎるなよ。お前には一生の選択のように思えても、そいつは数多くの選択の一つにすぎん。最大の選択ですらないんだ」

考えすぎてました

エリザベットさんは「元」衛兵です。衛兵として戦ってきた人生は「楽しいものだった」と自信を持って断言していますが、今は辞めてしまって旅に出ているのです。(老いたからというのも理由の一つですが、そうではない部分が大きい)それでもエリザベットは衛兵のマスクを被っている。衛兵エリザベットは生涯を通して衛兵エリザベットです。だからといって別に(職として)衛兵であり続けなければならないということはない

なるほど!?

マスクを選ぶということは、進路を、将来を決めるということとは少し違う。一生そのように生きなければならないという「縛り」でもない。機械をいじれなくなった機械工や、店を畳んだ商人も、機械工〇〇や商人〇〇であり続ける。この旅は取り返しのつかない人生の岐路ではなくて、「これが自分だ」という宣言*4をする儀式なんですね。

自分の芯にある価値観

マスクを集め、旅に満足したら、いよいよ故郷アイベスクの集落へと帰還します。旅を共にしてきたシムーンとの別れを惜しみながら、グライドの力を返還しマスクを一つ選び取るため遺跡へと向かいます。

自分が入手してきたマスクがずらりと並べられ、どれでも一つ選択することができます。えっ、本当にそれでいいの? と言いたくなるような奇抜なマスクを選択する自由もあります。全ては自分の決断です。

私は当初芸人のマスク*5を選択するつもりでいました。バッジ集めの過程で「人を楽しませて喜ばれるの、好きだなあ」という思いを抱いたためです。現実の私は別に芸能もパフォーマンスもやっておらず、せいぜい誰かが面白がってくれたらいいなと思いながらこういう記事を書いたりFF14でお店ごっこやったりする程度のことしかそれらしいことはしていません。ただ、そういう小さなことでも娯楽の提供には違いないはずだし、ゲームの中でくらいそういう道に進んでみようかなと思っていたのです。

でも私は結局芸人のマスクを選びませんでした。

アイベスク族は自給自足で生活する小規模な部族なので、娯楽に割ける時間はほとんどありません。日々の生活に必要な労働をしているだけで一日が終わります。そのため芸人として生きていきたいなら、アイベスク族を離れて他の部族の元へ身を寄せる必要があります。芸人のマスクを受け取った時点ではそんなこと全く想像もしていなかったので、後からそれを知って衝撃を受けました。自分の甘さが恥ずかしい。

どのマスクを選んでも、ゲーム上のシナリオにはおそらく全く影響しません*6。なのに私はここで小一時間悩み倒しました。ゲームの中の話だけど、セーブルの選択だけど、自分自身が「これを自分の顔としよう」と思えるマスクを選ばなければいけないと真剣に思いました。そう考えた時に、大切な人たちを置いてまでエンターテイナーとして生きる道を行くというのは「何かしっくりこないな」と感じたのです。

そうして私は「アイベスクのマスク」を選択し、このゲームを終えました。エリザベットさんの助言通り、これは一生の選択ではありません。エリザベットさんやロルホル*7のように、集落を出て旅をする自由がなくなったわけではない。そしていつかもし本当に旅に出たとしても、いずれは必ず故郷と思う場所へ帰ってくる。多分それが私の芯にある価値観なのだと思います。

この景色もいつかまた

プレイ時の注意

最後に一応購入前、プレイ時の注意点を記載しておきます!

酔うかも

この手のゲームではもう宿命ですが、酔う人は結構酔ってしまうようです。
景色の流れ方が独特なのもあって私も最初はちょっとくらくらしました。幸いそのうち慣れましたが、レビューを見ているとどうしようもなくてリタイアという人もちらほらいるので、酔いやすい人は紹介動画とかを複数見て検討した方がいいかもしれません。
youtu.be

セーブルの動きが独特

動画を見てもらえれば分かりますが、セーブルのモーションはなんだかカクカクしていて結構変わっています。これも慣れるまで結構違和感がありました。2D手描きアニメ風に見えるようにしたい意図があるそうです。
automaton-media.com

釣りが激重になることがある(再起動で直る)

※PS5版です。他でも起こるかは未調査。
釣り糸を垂らしてから反応が全くなくなることがあります。こうなると数分待たないと竿を上げられなくなったりします。ゲームを再起動すると直ります。どうやら長時間ゲームを起動しっぱなしだと起こりやすくなる感じでした。長時間やっているとバイクに乗ろうとする時もラグを感じたり移動が重たく感じたりも少しあったので、何かちょっと重いかもと感じ始めたら再起動すると良いと思います。

日本語の攻略情報が少ない

Steamガイドに日本語の記事が一本もない。そこにないなら作りましょ! ……と言いたいところですがこの作品のガイド書くのはちょっと大変だなあとなって断念しましたすみません。英語ならフルコンプガイドまでそろっています。ちょっと検索した感じではトロフィーの条件一覧なんかはすぐ出ましたが、クエストの手順とか説明している記事は攻略ではないプレイ日記に多い印象でした。ピンポイントで自分が詰まっている箇所の攻略を探すのが難しいです。自由に探索できるゲームなのであんまりカリカリ攻略しなくてもいいのですが、ハマると収集要素全部集めたくなりますし……。

機械翻訳でだいたいはいけると思うのでとりあえず英語のガイドを片手に頑張ってください。動画で攻略を出している人もいるみたいです。
steamcommunity.com

まとめ

やっぱりこういう自分自身がその世界に入り込んで考え込む体験が大好きでゲームやってるんだよなあということを何度目かの再確認した作品でした。人によって合う合わないはあると思いますが、ハマる人はしばらくミッデンに精神を連れ去られたままになるくらいのハマり方をするタイプのゲームだと思います。

もしプレイする機会があったら、ぜひともセーブルになりきって旅をしてください。誰の言葉に一番共感し、どのマスクを選びたいと思うのか。自分自身のことと思ってしっかり考え、自分だけの旅路を歩んでください。ゲームは人生。

おわります。みなさんも良い旅を。

好きなゲーム紹介アドベントカレンダー

参加させてもらった好きなゲーム紹介アドベントカレンダーです。
他のみなさんの記事もどうぞ!
なんと参加者多数で3枚もある。
adventar.org
adventar.org
adventar.org

*1:ミスキーサーバー・ゲームすきー利用者の通称。ジンギス川に生きるザリガニ。みんなゲームがだいすき。

*2:子どものうちは一族から与えられた子ども用マスクを被っています。

*3:物によってはバッジではなくマスクそのものを取得するタイプもあります。

*4:一言でまとめるとアイデンティティの確立というやつなのかもしれません。でもアイデンティティという単語では腑に落ち切っていなかった部分までストンと納得できた感覚があったので、この言葉は使わないでおきます。

*5:英語ではエンターテイナーのマスク

*6:やり直していないので一回しかエンディングを見ていませんが、多分ムービーで被っているマスクが選んだものに変わるだけだと思います。

*7:芸人のバッジをもらえるクエストに出てくる寓話師