くらげーむ

やったゲームの話をします

【FINAL FANTASY XVI】隙のない出来なのに何故か物足りない

jp.finalfantasyxvi.com

ジャンル RPG
プレイ環境 PS5
知ったきっかけ FF最新作なので
購入の流れ PS4からPS5に乗り換えたので購入

ずっとPS4を使っていたのですが最近さすがにちょっと怪しい動作をすることがちらほら出てきたため思い切ってPS5を購入しました。環境さえ整ったならやらない理由はないFF16。すでに発売していたので体験版は触らずにすぐ購入しました。

プレイ時間は(何がそんなにかかったのか謎だけど)76時間、途中放置したりもせずすんなりとクリアできました。できましたが……何だろう、この言語化しづらい物足りなさ。悪くはなかったと思うし、楽しかったと思うし、はっきりしんどかったポイントがあったわけでもない。でも何かが物足りない。そんなプレイ後感です。

以下感想、ネタバレとスクショがあります

満足感はある

クリアした満足感はちゃんとあります。久々にしっかりした大作RPGをやったなと。
なんといってもグラフィックが本当に圧倒的でした。右見ても左見てもリアルで美麗、炎と光のエフェクトは夢に出そうなほど鮮やかで幻想的。

暗いシーンで光るエフェクトが綺麗

キャラクターの動きもとても滑らかで不自然さがなく生きているかのよう。ただし表情はちょっと固いなと思う時がしばしばありました。笑顔や怒りは自然なんですが少し曇る感じの表情が苦手? なのかそこは微笑むような顔する台詞じゃない気がする……というところでにこっとしているように見えることが結構ありました。

でもトルガルは表情も含めてパーフェクトかわいいでした。本作のMVP。いつでもどこでも常に可愛く賢く忠義の狼、そして強い。トルガルがプレイのモチベーションの半分を支えていたといっても過言ではありません。ゲームに出てくる動物全般愛でる方ですが、トルガルは今まで触ったゲームの中でも群を抜いて可愛かったです。一緒に旅が出来て良かった! 本当にめちゃくちゃ可愛いので犬(特に大型犬)大好きな人はこれだけでもプレイする価値があると思います。真剣に。

子犬(狼)時代の自分の話題を出されて「んー?」と首を傾げるトルガルとボクラド市場通過時に身分証がないことを突っ込まれて人間と一緒に目を逸らすトルガルが二大お気に入りトルガルです。賢い、可愛い。

犬ドリル

バトルのアクションは個人的にちょうどいい難易度で、自分の操作でもカッコよくアクション出来ていると思えて楽しかったです。サポートアクセサリはオートトルガルのみつけっぱなしにしていました。その程度のヘタウマプレイヤーでも楽しめるアクションですが、すごい人のコンボ動画見てみたら完全に別のゲームでした。空中コンボなにそれぇ……。ただ、そこまで出来なくても十分スタイリッシュな雰囲気は出せます。その上効果音やコンボ表示が豪華でとても気分が良いです。

それが楽しくてモブハントコンプしました。

あとFF14プレイヤーなので、FF14から輸入されてきたネタに逐一喜んでいました。
カータライズ! 見たことあるリミットブレイクゲージ! 石材製アラグ玉!!
メガフレアがギガフレアになり、更にテラフレアが出た時には次エクサフレア*1来たらどうしようと思いましたがそれはすっ飛ばしてゼタフレアに行ったので命拾いしました。

石材製アラグ玉

肝心のストーリーについては後で書きますが、普通くらいの面白さだった……かな? という感じ。でもそれは好みの問題も入っているし、特に大きな破綻はありません。そこに圧倒的な映像美とバトル込みの盛り上がりが加わるので全体的に満足はしました。

……と、作品要素のどこを取ってもすごく不満と思うような項目がない。ないのに、あと一歩物足りなさがある。服を着たまま水の中を歩いているような感じのもどかしさ。ここから先その理由を掘り下げていきます。ほぼ個人的なこだわりの話です。

画面の向こうにあるのが「世界」ではなく「舞台の背景」に思える

まず、全編通してずっとクライヴの移動操作がもどかしいと感じていました。走り方がどっしりとしていて重たく、平時のジャンプはモーションを取るだけで機能しない。一見越えられそうな段差が越えられず引っかかる。越えられる段差はジャンプ押さずとも華麗に斜めステップで越えてくれます。それはそれでいいのですが……。

このくらいクライヴくんの身体能力なら飛び越えられそうなのに

クライヴがヒカセン*2みたいな脚力でぴょんぴょこ跳ね回っていたら一瞬で場違いな絵面が出来上がってしまうためにこのような仕様なのかなと納得はしています。でももどかしい。そして普通にちょっと不便。現実と違うゲームの中ですら行きたいと思った方向へ進みづらいというのはなかなかにストレスです。あんまり派手に動くべきでない施設や町の中で制限されるのはまだしも、外のフィールドを走り回る時にも妙にあちこち壁があって上手く進めない感覚がありました。敷かれている獣道の上しか自由に通行できなかったりする。ちょっと盛り上がった岩を乗り越えてショートカット、なんてことはできない。結果、なんだか世界がとても狭く感じる

探索要素は絞ってストーリーに集中させる作りになっているとは聞いています。実際、ここまで道が限られていればうっかり逸れて進行が迷子になることも起こりにくいでしょう。分かってる、でもやっぱり息苦しい! あんなにリアルな景色が見えているのに、行けない。クライヴがわざわざ遠回りをする道理もないのは分かっているけど、行かないのと壁にぶち当たって行けないのはちょっと違う。歩く道順までレールを敷かれているようで、それは親切を通り越してややお節介に感じます。実装コストなどの諸々もあるのでしょうが、私はもう少し自由に歩きたかった

遠景に海や城が映る一見広々としたフィールドも、この移動のままならなさを伴って眺めた時実在感が薄いように感じてしまいました。

ノースリーチから眺めるオリフレムはFF14のイシュガルドに似ています。堅牢な門の向こうに壮麗な城がそびえている光景。まだ新生エオルゼアのストーリーを進めていた頃、門は堅く閉ざされ先の景色は想像することしかできないながらも確かにそこにあるんだろうなという実感がありました。後になってプレイし始めた身なので後々本当にイシュガルドへ入国できることを知ってはいましたが、もしそうではなかったとしても同じ感想だったんじゃないかという予感があります。

向こうに見えるオリフレムも書き割りに思えてくる

オリフレムが見えるこの景色は、まるで舞台の書き割りのような、ただそこに描かれただけの絵だという風に感じられてしまいました。あそこにあるのは一枚の板で、めくってしまえば何もない舞台裏なのではないかという気がしてしまう。一度その感覚を得てしまうと、ロストウィングやダリミルにもスタジオセットの中にいるような窮屈さを覚えるようになりました。一つ一つを見て回っても全部作り物だしあまり意味がないかもしれない、という虚しさが過る。

この時私はクライヴという媒介を通して今ヴァリスゼアの地に立っているゲームプレイヤーではなく、モニターという第四の壁のこちら側にある座席で大人しく舞台を見ている観客でした。舞台上で展開されている壮大な物語を観劇するのも、つまらなくはないです。ちゃんと楽しかったのです。むしろ、だからこそ(物語ではなく)あちらの世界に没入できなかったことを寂しく思いました。*3

意外にシンプルなストーリーとまだ掴めていないテーマ

ストーリーについては最初、FF14紅蓮のリベレーターのようなシリアスで重いお話なのかなと思っていました。そんなことはなかった……とまでは行きませんが、最後まで読み切ってみると骨子はシンプルで王道なゲーム的ファンタジーでした。

プレイ途中で「戦記物ではない」という話を耳にはしていましたが本当にその通りでした。序盤から中盤までは他国のマップに踏み入れるだけで緊張感があったものですが、壮年期に入った途端に国の垣根がなくなってしまったように感じました。壮年期最初のコストニツェ難民街ではお尋ね者として隠れ潜む雰囲気が出ていましたが、それ以降はあまり緊張を感じませんでした。ベアラー印を消去したので動きやすくなったという事情はあるものの、どうにも国同士が睨みあっていることを忘れてしまうような空気でした。各国にはしっかり協力者が居てくれて、意外と不自由することなくヴァリスゼア全土を奔走できます。その協力者の人脈はというと概ねシドから引き継いだものなので……なんか思ったより苦労してないな*4もっと大変で重苦しい目に合うのかと思っていました。それと活動資金面は大富豪の叔父さんで解決するという大胆さにちょっと笑いました。嫌いではないです。叔父さん自身のキャラも老練コミカルおじさんという感じで好きでした。*5叔父さんがいるとムードが明るくなって助かります。

そういう点から「人間と社会を巡るエグくて暗くて重たい話」が主眼ではないんだなと理解した頃にアルテマが登場してきて、話は更にシンプルになりました。なるほど、いつものファイナルファンタジーです。納得しました。そのあたり色々な人が既に言及している記事を読んできたのですが、自分が感じている物足りなさの原因はそこではないなと思いました。シンプルで王道なファンタジーであることは自分にとって問題ありません。ただ、筋がシンプルであるならその分このゲーム世界のことをちゃんと語ってほしい

ゼノブレイド3のシナリオに対する思いと似たようなところに着地しました。
kamkrgame.hatenablog.com

世界は黒の一帯に侵され死んでいく、ベアラーやドミナントが生み出され過酷な人生を歩む、クリスタルの加護は実は呪縛である……とものすごく気になる謎を次々投入されながら、その解明はほとんどアルテマ主観の愚痴っぽい演説と備忘録の用語説明で行われてしまいました。*6ストーリー描写の中に出てこない。世界の解明はクライヴの主目的ではないので仕方ない面もあるとは思います。(そう納得させています。)でも「恩恵をもたらすマザークリスタルが実は黒の一帯を引き起こす原因なんだ!」ということで頑張って破壊活動をしていた割には黒の浸食が全然止まらないどころか進行してる点をあんまり気に止めてない*7印象があるのは何でなのと思ってしまいました。何のためにクリスタル破壊してたんだっけ。いや、本当に何でだったっけ……。世界が終末化してからベアラー問題も環境破壊問題も後景に退いて打倒アルテマの方に意識が行ってしまったためにそのあたりの記憶があやふやです。後で見直してきます……。

歴代FFも全部が全部創造したゲーム内世界を語ることに注力しているわけではありませんでした。FF2とFF9に思い入れがありますが、どちらも世界のことはそんなに語っていません。FF2はそれこそまさに戦記物だし*8FF9は「命とは、生きるとは」というテーマの方に重きがあるので世界の話をしていなくても物足りないとは感じませんでした。

FF16のテーマは何だったのでしょうか。「人が人として生きられること」でしょうか?

このストーリーのテーマを私はまだよく呑み込めていません。絆とか自我とか生きたいように生きるとか……なんとなくキーワードは浮かびますがまだしっくり腑に落ちていません。自分の読み込みが足りていないのか、ストーリーの書き方が良くないのかは判断がつきません。1周クリアしただけだしアルティマニアも読んでいない身なので私が悪いのかもしれません。

ただ「人が人として生きられること」というフレーズについては思うところがあります。最初このスローガンは虐げられ自由を奪われているベアラーを中心に指し、「差別構造を生み出してしまった社会の変革を目指す」という意味なのだと受け止めていました。しかし世界の危機はおおよそアルテマが原因であり、この神を倒さねば人間に未来はないということが明らかになった後も同じ調子で唱えられ続けます。そのためこのフレーズの意味が「神殺しを達成して人間の手で世界を作る」という意味合いに変質したように聞こえてしまい、ちょっと良くない味がしました。この点のフォローがない*9ように感じたために、「遠い未来にはベアラーという存在自体がなくなったのでみんな人として生きられるようになりました」が結論ってことでいいの? と疑ってしまう。*10あのエピローグがないと報われた感が少なくてすごく辛いエンディングになってしまうのであれが悪いとは言いにくいし言わないのですが……。

クリスタル自治領に入ってからバハムート戦終了までなんかはやってるうちに気づいたら午前4時だったりと引き込まれる場面があったのも確かです。投げ出したいほどつまらないと思ったところもないし……なのにやり終えた今はものすごく満足とも言えない。そのためになんだかもにゃもにゃとした感想になっています。

急にぼかされるエンディング

すっきり満足と言って終われなかったのはエンディングの演出も原因かなと思っています。

全てを終わらせたクライヴは月を見ていた。月を……。終わり?

情感はたっぷりあります。どういう終わりを迎えたのかはだいたい理解できます。ただ「ここまでものすごく分かりやすいストーリーだったのに結末だけふわっとさせるの?」と少し戸惑いました。ふわっとした結末がくる心構えができていなかったというか、そういう落とし方をするタイプのお話だと感じていなかったというか。結末に至るまでのシナリオでは解釈の分かれるような場面が全然なく明快だったために、エンディングでいきなり放り出されてしまったような気持ちになりました。ここまで全てを完璧にコントロールした「舞台」を見せてきたのだから、結末もまたハッピーともビターとも好きなように受け取れる形にはしないではっきりと物語の顛末を提示してもよかったのではと思います。思いますが……これもまあ個人的な好みですよね。

クライヴの結末がぼやかされてしまったことによる一番の犠牲者はジルだと思います。

主人公の隣に立って戦えるヒロインかと思いきや囚われては助けられして足手まといになっている(と本人が悔しく思うだろうなあ)と感じる場面が複数有り*11、あげくに戦うための力も持っていかれてしまう。それは何より彼女のことを思っての選択というのはよく分かる、分かるけど歯がゆい。ジョシュアがちらっとそのあたりも指して「ジルは我慢してる」と言ってくれますが本当にそう。本当にそう。鈍すぎるよ兄さん。傍で支えたかっただろうに守りたいからと置いてけぼりにされ、帰りを待つヒロインにされてしまったジルは結局クライヴの帰還を迎えすらさせてもらえません。ぼやかされたから。行ったきり帰ってこなくなった男を想って泣く、構図だけ見たら古典的な無力ヒロインのような処遇です。可哀そうに……。

一緒に行きたかっただろうに

ジルについて書き始めたら思ったよりドバドバ出てきて今びっくりしています。どうやらエンディングに対する一番の不満はジルへの同情から来ていたようです。ジル自身が全てを受け入れていたならともかくめちゃくちゃ泣いてたじゃん。この身燃やし尽くしてもとか覚悟決める前に一瞬ジルの顔思い出すくらいしたらどうなんだクライヴ。必ず帰るって約束しただろクライヴ。ジョシュアのことは赤子時代にまで思いを馳せておいて……。※この感想は演出不足が云々とかいう話ではなく彼氏のことで泣いてる友達の代わりに怒っているという感じのアレです。

ふと宝塚版が決まっていることを思い出しましたが、どうなるんでしょうか。ヅカ版はヅカ版ですよということでいっちょ海岸まで殴り込みに行くジルエンドとかやっちゃってくれないでしょうか。ダメ?

まとめ

ゼノブレイド3同様、「もっとすごい何かが出てくるんじゃないか」と期待を膨らませすぎて自分のこだわりに合わなかったために悪くはなかったけど思った以上ではなかった……という感想に落ち着いてしまったのかなと思います。それと作品内容に関係ないので言及してきませんでしたが、画面は本当にめちゃくちゃ暗くて中盤まで苦労しました。途中でそれまで使っていたモニターの液晶を割ってしまったため買い替えた結果HDR対応になり、そこからは画面上ではかなり見えやすくなりました。ただ画面は見えてもスクリーンショットは暗いまま。上に貼っているものもだいぶ暗い。せっかくの景色が上手く映らないのが悲しいので、アップデートでグループポーズのように明るさを調整できる機能を入れてもらえたりしたら嬉しいなと思います。

価格分は十分楽しめたし、熱心に勧めるまではいかないもののPS5を持っている人にはお勧めできると思います。長い長い長いスタッフロールがなかなか終わらない様を眺めていると、これだけの人数が集ってすごいお金をかけてつくられた作品が1万円せずに楽しめてしまうのは破格なんじゃないかと思います。たとえば1話1時間の50話ドラマだとBOX上下になって5万円超とかになってしまうこともありますし。

色々思うところはありましたが、総合的にはプレイできて良かったなと思っています。DLCが発売されたら購入するつもりです。

追記
kamkrgame.hatenablog.com

*1:FF14の移動してくる範囲攻撃、死ぬほど苦手

*2:FF14の光の戦士、プレイヤーキャラクター

*3:本物の舞台演劇や映像作品は基本的に観客が介入しないのが前提なのを承知の上で楽しむ物なのでそれらは問題ありません。ゲームには(RPGには)舞台形式の娯楽を期待していないため少し残念に思ってしまったという話です。また最初の項目に書いた通りFF16全編でゲームらしさを感じなかったということではありません。

*4:少年期青年期の体験はもちろん壮絶で悲惨なのですがそこではなく、「世界の在り方に抗う組織」をやっていく大変さをあんまり感じなかったという話です。

*5:カローンもやり手のイケオバだったし、年配組が魅力的なゲームだなと思います。

*6:もちろんないよりは絶対良いです。読めば全部書いてあったので「ものすごく不満」で終わらずにすみました。

*7:もちろん心配とかはしているのですが、マザークリスタルを破壊した後の影響調査をしてないというか……してたっけ?

*8:皇帝が地獄から蘇ってくるのはファンタジーだけど筋としては最後まで反乱軍として決死で戦う若者たちの話

*9:ベアラー差別については終盤ルボルのサブクエストで触れてはいます。けれどもさすがにちょっと単純化されすぎていて、この解像度のグラフィックで見ると台詞と展開がややチープに感じられてしまうなと思いました。抽象度が高いドット絵ならこれでも悪くなかったかと思います。

*10:プレイ前に拝読してなるほどと思っていた記事にこういう考察がありました。

【『FF16』を作ることは、すべての人(JRPG制作者)が人(RPG制作者)として生きられる場所を作る闘争ではなかったのかと思うのだ。】
引用元:https://turqu-videogame.hatenablog.com/entry/2023/07/08/142703

これをエピローグにも適用してみると「遠い未来にはJRPGという概念がなくなり、どんな特徴を持ったRPGを作ろうとする人でもみんなRPG開発者として生きていける世界になる」となります。これなら結構しっくりくるし共感します。ただこれがもし正解だったとしても裏テーマであって真テーマではないだろうと思うので、やっぱりもうちょっと腑に落ちる説得がほしいところだなと個人的には思います。

*11:アインヘリアルの件はジル自らしんがりをやった結果ではあるので典型的な囚われ方ではないですが……囚われたと分かった時の兄弟の反応が「大丈夫まだ生きてる、心配ない!」みたいなテンションだったのはそれはそれでどうなんと思いました。もうちょっと深刻に心配して。