くらげーむ

やったゲームの話をします

【7 Days to End with You】と【Her Story】ゲームとして遊びすぎると物語に入りきれなくなるジレンマ

先日セールでまとめ買いしたインディーADVたち、FF16クリアしてからやるとか言ってたくせに結局我慢できず手を出して二作品プレイしました。とはいえ短編なのでさくっとプレイでき、箸休めには良い感じでした。ゲームの息抜きにゲームをやる。

7 Days to End with You と Her Story はどちらもSteamやブログなんかで熱いレビューがたくさん出てきます。実際プレイしてみて言われていた良さは分かったのですが、自分の遊び方が下手だったためにレビューで見るほどの熱い気持ちは抱けなかったかなという感想に落ち着きました。

以下どちらもストーリーの直接的なネタバレはしていませんが、未プレイの方が読むにはあんまりおすすめしない内容の日記です。

Her Story

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警察の古いデータベースを検索し、とある女性の聴取記録映像を閲覧していくゲーム。触り始めたら止まらなくなり、一日で全ての映像を閲覧してしまいました。面白かったです。

まずUIが昔のそれっぽいデスクトップ画面で、ブラウン管モニターらしきノイズが入っているのがテンション上がりました。データベースを検索している主人公はプレイヤー自身とは別に存在しますが、まるで本当に自分が操作しているかのように感じられるUI大好きです。

このゲーム、説明やレビューを見て「断片的な映像から起きたことと真相を自分で推理するゲーム」だと思い、そのつもりで挑みました。でもそれがあんまり良くなかった気がします。挑んではいけなかった。力みすぎていた。真相を探るぞと気合を入れて対峙した結果、プレイ序盤でいきなり致命的な映像をヒットさせてしまいました。これ本当は色んな映像を見ていって矛盾するところとか違和感とかが溜まってきた頃に引き当ててそういうこと!? とびっくりする流れが一番美しかったんじゃ……とやってしまった感がものすごかった。

このゲームの主人公は何が起きたのかは知っている上で、何故それが起きたのかを知りたいとデータベースを検索することになったようです。つまり主人公は探偵役ではなかったんですよね。過去に解決している事件だし、記録映像には何もかも残っている。答えは最初からそこに置いてあって、ただ簡単には見られないというだけ。だから最初から真相に行き着こうと捻ったキーワードで検索するより、頭の方から順番に出てきたキーワードを検索する方が物語中に居る人と似た体験ができたんだろうなと思います。

ネタはありふれているが、とストアページに書いてある通り要素だけ引き抜くと「こういう系の話か」と思う内容でしたが、実在の人物が事情聴取を受けていたと錯覚する映像のおかげで、プレイ中は嘘くささやありがち感は特に覚えずのめり込んで鑑賞していました。ネタバレ映像を踏んでしまってから前半の映像を見ていても台無しにはなっていませんでした。これが実写映像の強みなのかなと思います。レトロチカの真相究明シーンでも同じことを思いました。そうはならんやろという感想がいつの間にかどこかに行ってしまう。人間って複雑だもの、そういうこともあるのかもしれない……という気持ちになっちゃう説得力。俳優ってすごいなと思います。

7 Days to End with You

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号泣するほど心を揺さぶられている人と、やや冷め気味の感想を抱いている人で評価が二分している本作。ネタバレ見ないように薄目で読んだ感じおそらく自分は後者に入っちゃう予感はしながら、心を揺さぶられることへの期待も捨てきらずにプレイしました。案の定どちらかといえば後者でしたが……。とはいえ悪く思っているわけではなく、普通に楽しみました。前から気になっていたし、やって良かったです。

各所のレビューでも強調されている通り、言葉が全く通じないという第一印象は確かに強烈でした。ゲーム開始直後は本当に何も分からなくて新鮮でした。が、あまりにも分からなさすぎてゲームの進め方自体もよく分からず、開始十分くらいでストレスに感じ始めてしまいました。チュートリアルもゲーム中の説明だけではよく分からず、攻略サイトで調べました。そして内容が全然分からない会話を聞き流した後、私が(主人公として)彼女の言葉を理解したいという気持ちになりきれないうちに家の中に放り出されてしまいました。その後は物をクリックしては彼女の発言をかき集める作業の繰り返し。この辺りのままならなさも舞台装置の一つとして楽しめる、上手くのれる人ならもっと没入できたのかもしれません。

単語推測の方法についてちょっとヒントをもらい、ある程度言葉が埋まりだしてからは連鎖的に想像がしやすくなって解読が捗りました。そこまで軌道に乗るとあっちもこっちも解き明かしたいというモチベーションが湧いてきて、1周目ENDまで一気に走り切りました。でもこれ、単に単語解読パズルが楽しくなっただけだな……とENDマーク見ながら寂しい気持ちに。言葉を選んで伝えるシーンを上手く切り抜けても、「言葉が通じた」というよりは「クイズに正解した」というような感覚でした。単語解読パズルゲームとしても売り出されているのでそう楽しむのもきっと間違いではないし、ちゃんと遊べたなとは思います。けれど本当は私も彼女と意思疎通ができて喜びを感じるとかいう類の没入がしたかった! 

とはいえ、実のところプレイヤーが彼女に対して使える単語の数はとても少なく、特定の場面で正しい単語を選択できなければ「よく分からないよ」と言われておしまいです。なのでおそらくこのゲームはそもそも未知の言語による意思疎通という体験を作ることを主目的とはしていないのだと思います。副次的にそういう効果が生まれることもあるだけで。主旨はおそらく主人公が何者であるか、彼女はどうして主人公に尽くしてくれるのかを解明することです。

自分から没入して遊ぶのが上手な人ならこのデザインでもプレイヤー自身が彼女と何とかコミュニケーションを取ろうとしている感覚を持てるのかもしれません*1。そういう人の感想やレビューはとても熱量が高いので、つい自分もそれを得られるのかもと期待してしまいますが……私はゲーム側がそのつもりで用意してくれているものでないと上手く受け取れないようです。

そうして勝手に期待してしまったけど得られなかったものを脇に置けば、普通に面白いゲームでした。お話自体は思いもよらないようなものではありません*2でしたが、自力で単語を解読することで段々真相がはっきりしてくるのが気持ちよかったので最後まで楽しく読み切れました。特に初日冒頭で女性が話す言葉は初回起動時と周回時で感じ方が変わるのを狙って作られていたように思います。こういうものを「コンピューターを活かしたシステムとそれを活かしたシナリオ(ゲーム性以外の面白さ 【ゲーム性】 - YouTube)」と言うのですよね。多分。

全くの余談ですが、料理のレシピらしいメモに出てきた単語を全部「食材関係」と翻訳メモしていたがために一つ全然関係ないシリアスな場面で女性の発言を「教える・食材関係」と訳してしまい、「今ご飯の話する!?」と一人でウケたりしました。身に染みて分かる誤訳の影響。

物語に入りたい自分とプレイヤーになってしまう自分

二作品とも、物語に没入できることを期待して買いながら、ゲームとして楽しく遊びすぎたがためにかえって物語の中には飛び込みきれずに終わったという感想になりました。(勝手に期待しただけなので各作品に不満はありません)

私はゲームの中に入り込んだと錯覚する体験が大好きで、特にADVではそういう作品を探し回っています。でもゲームで遊ぶことも大好きなので、できるだけ良い結果を出そうと頑張ったり、全てを解き明かそうと考えたりしてしまいがちです。それが勝ってしまうと、私は画面のこちら側にいるただのゲームプレイヤーになります。能動的に取り組むタスクの思考力コストが高くなるほど、物語を離れて現実に帰ってきてしまいやすくなるようです。

かといってゲーム自体があまりにもつまらないと当然苦痛に感じて投げ出してしまうし、塩梅が難しいところです。幸い自分の環境でも意外とSteamのインディーADV動いちゃうことが判明したので、どんどん買ってどんどんやって相性の良い作品を探していこうと思います。

というわけで次これ買いたい(積みゲー山盛りあるけど……)

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*1:クリアしてからネタバレ有りで色々感想を探してみると女性と主人公の名前を想像で自由につけていたという人が居て、なるほど……と思いました。「自分の名前」とか翻訳メモに突っ込んでる場合じゃなかった。情緒が死んでいるプレイヤーです。そういう風に遊べる人、いいなあ。

*2:部屋にあからさまな物が置いてあるので、この手の話に馴染みがあるプレイヤーだとそんなに単語解読せずとも何が起きてるのかおおよそ察しがつくと思います。